国内の特許・商標・意匠、米国の知財に関する一口メモ

特許調査について:特許権侵害の回避

特許調査というのは、目的によって、やり方や範囲が変わります。
(1)ある製品を作ったので、この製品を販売したいが、誰かの特許を侵害しないか調べたい。
(2)発明をしたから、特許が取れそうか調べたい。発明をしたのだが、すでに特許になっていないか調べたい。

(1)の調査はいくつか問題があります。それは、調査したいのは何かがはっきりしていないということです。
例えば、「コンピュータのマウスを作った。このマウスはエラーが発生したときに振動する」といった状況にあるとします。
もし、(2)なのであれば、「エラーが発生したときに振動する」マウスについて、特許調査すればよいということになります。こういった調査は比較的簡単に実施できます。
(1)の場合に、この調査をしてみたところ、既存の特許権には抵触しそうなものがなかったとします。それであれば、実施販売したいと判断してよいでしょうか。答えは、OKではありません。
確かに、「エラーが発生したときに振動する」という点では他の人の特許を侵害していないことは分かりましたが、その他の点で特許権を侵害しているか判断できていません。例えば、このマウスのマウスホイールはありきたりのものだと思って作っていたが、実はある会社が持っている特許権を侵害するものであったということがありえます。滑りやすくするための樹脂シートが特許製品であるかもしれません。マウス本体ではなく、ケーブルの先であるコネクタについても同様です。USBのコネクタに関しても、広く使って欲しいものの、その使い方についてはルールがあるでしょう。
また、マウスホイールについては特許権を侵害するものの、樹脂シートの部品については、特許権を持っている会社が製造販売している樹脂シートを使っているのであれば、特許権の侵害を気にする必要はありません。

本来は、完璧に特許調査をするために、マウスに関する特許権を一通り調査しなければなりません。それには莫大な費用が掛かります。

現実的には、その都度、完璧な特許調査をするのを諦めざるをえません。もちろん、企業として誠意をもって調査はしたといえることをすべきです。過失は仕方ないとしても、重過失を含めて故意は犯罪になります。過失であっても損害の賠償責任も生じます。

アプローチとしては、ある程度の目星は付ける。マウスについても、このあたりの構造は昔からの構造を踏襲しているし、部品として信頼のおける会社が製造販売している部品だと言えるのであれば、その構造については調査すべき項目から外します。
そういう観点で、まずはマウスの特徴や構造を箇条書きにしてみて、出尽くしたら、一つ一つを上の視点で確認していきます。そうすると、残った項目が特許調査をしておくべき項目と言えるのかと思います。
実際に調査する側では、そういった項目から調査に相応しい視点で分析してみて、どういったキーワードを使うかとか、どういった範囲に絞るかとか、調査方針を決めるということになると思います。

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2017年度の中国特許庁出願受理件数と授権件数の状況

中国の代理人から昨年度の中国特許庁の出願件数と権利化件数の連絡を受けました。
発明は年間で138万件出願されており、日本と比較になりません。多くは請求項1が複数頁にわたる分量になるそうで、ごみのようなものらしいです。ですが、その旺盛なことは脅威です。
日本でも過去には50万件を超えていた時期もありました。特許庁での審査の遅延の防止のために実用新案制度をあれこれいじくっていた時期があります。確かに、その時にも多くの些細な発明が出願はされていました。
そういった勢いがなくなった日本に未来があるとは思えないという声もよく耳にします。

2017年の中国特許庁出願受理件数と授権件数の状況(件数は万件))

出願件数

年度 : 発明 : 実用 : 意匠 : 合計
2017 : 138.2 : 168.7 : 62.9 : 369.8
2016 : 133.9 : 147.6 : 65.0 : 346.5
2015 : 110.2 : 112.8 : 56.9 : 279.9
増加率 : 3.2%: 14.4%: -3.2% : 6.7%
(2017/2016)

授権件数

年度 : 発明 : 実用 : 意匠 : 合計
2017 : 42.0 : 97.3 : 44.3 : 183.6
2016 : 40.4 : 90.3 : 44.6 : 175.3
2015 : 35.9 : 87.6 : 48.3 : 171.8
増加率 : 4.0% : 7.8% : -0.7% : 4.7%
(2017/2016)

※フォントずれしてしまうので、:を入れています。見えづらくて申し訳ありません。

 

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